アニメやマンガ(英語でanime, mangaと言う場合、特に日本のアニメ、マンガを指す)などの現代日本ポップ・カルチャーは、「ハリーポッター」現象のアジア版に相当する。ハリポも、日本アニメ/マンガも、アメリカにとっては海外輸入品であり、それが国内で旋風を巻き起こすという点で共通しているからだ。
ハリウットが映画館の座席をなんとか埋めようと四苦八苦する一方、日本アニメ作品に対する人気は、増々アメリカ映画を追い抜く勢いを見せる。これは質の上だけではなく、ファンの熱意と献身的愛情を日本アニメの方がより強く勝ち得ているという点でも言えることだ。
しかし、ハリーポッターが普遍的なテーマ性を持ち、かつ非常に「イギリス的」であるのと同じように、日本アニメも極めて「日本的」だ。故に、日本アニメ/マンガがアメリカで大ヒットするなど、全く予想外の出来事だった。
ジャパナメリカは、日本のポップ現象を体験したアメリカについて直接に取り上げた初めての作品だ。その内容も広範囲に渡る: 宮崎駿の大作、萌える「HENTAI」世界(もしくは暴力的なエロ漫画)、連日CARTOON NETWORK(アメリカのアニメ専門チャンネル)でその活躍が放映されるパフィーアミユミ、そして小説家、村上春樹。その他の内容も満載である。
今の時代、アメリカと日本のポップ・カルチャーが互いに葛藤を抱えつつ、劇的に切磋琢磨し合う様子を描いたジャパナメリカは、双方の国のアニメ/マンガ・アーティスト、評論家、読者、ファンなどから得た見識を元に書かれている。今風でヒップなばかりでなく、しっかり読み応えのある一冊だ。
ローランド・ケルツ (Roland Kelts)
アメリカ人の父親と日本人の母親の間に生まれ、アメリカと日本で育つ。オーバリン大学、コロンビア大学を卒業後、ニューヨーク大学、ラトガーズ大学、バーナード大学などの教壇に立つ。アメリカでは、「プレイボーイ」「ダブルテイク」「サロン」「ヴィレッジ・ヴォイス」「ニューズデイ」「コスモポリタン」「ヴォーグ」などの雑誌や新聞に、数々の作品・記事・エッセイを寄稿。小説では、短篇作品が「ゾエトロープ」に掲載される。2006年に創刊された文芸誌「A Public Space」(New York)の創刊号では、副編集長として日本文学特集を担当。日本では、「朝日新聞」「読売新聞」「毎日新聞」「ジャパン・タイムズ」などに作者プロフィールが紹介され、「群像」「ヴォーグ・ニッポン」などの雑誌にエッセイや記事を提供する。
書き下ろし小説「ACCESS」が2008年に出版される予定。現在、東京大学の講師と千葉大学の客員講師を務める。ニューヨークと東京に在住。
「The Times of London」のアジア・ビジネス特派員。イギリスのLiverpool Echo紙にて、ジャーナリストとしての第一歩を踏み出す。後に企業・金融市場を専門とする記者としてThe Independent on Sunday紙でキャリアを積む。The Economist、Edge、GQ、Japan Incなど、数多くの雑誌に記事を提供する。
オックスフォード大学で東洋学を学び、学生として1993年に初めて日本に移り住む。日本政治学・社会学を専攻し、卒業論文ではパチンコ業界の社会経済論をテーマとする。イギリスの学究社会では一流の日本学家たちの下で学び、その効果は絶大であったとのこと。「日本を学ぼうと思った動機は?」 - 今まで本人はこの問い掛けに対し、高尚な理由を色々とあげて来たらしいが、実のところ、最も本人を動機付けた要因はパックマン、遠藤周作、ソニー・ウォークマン辺りであったらしい。